forget forgot forgotten

ゆく川の水は何とやら。 思い出はあるけれど、忘却の彼方に置き忘れた物たちは、どんな色や形をしていたのだろう。 その断片だけでもつなぎとめるために、訥々と、時に意味もなくただ書き連ねよう。

siren(ce)

何処からかヘリコプターの音が聴こえる
赤いパトランプがそれを眺め
野次馬が非日常を眺め
僕もそのひとり

ポケットに伸ばした手を止める
ちがう。そうじゃない。

軟着陸した機体から
それを迎えた白い機体から
青と紺の人達がバタバタと入り混じる

真っ白なシーツに身を隠した
当事者が静かに立ち去っていく 

傍観者は手にカメラを構え、
当事者ではなくヘリコプターを捉える
その手は祈りにもよく似ていた 

満足そうな笑みを浮かべながら 

僕はいつまでも鳴らないサイレンに
しばし耳をすました

振り返ればそこには日常があって
皆それぞれの役割を果たしている

ローズマリーの花が揺れている
鳥達が群れて空を飛ぶ

僕は雨雲と晴れの境い目にいて
少し雨の降る側にいる 

このサンチマンタリズムになんて名前をつけよう 

それはただの「きまぐれ』